
駐車場の放置車両、勝手に撤去していい?オーナーが取るべき正しい手順と費用を解説
こんにちは!駐車場経営マガジン編集部です!
「契約が終わったはずなのに車が置きっぱなし」
「見知らぬ車が何ヶ月も放置されている」
「警察に相談したら『私有地なので対応できません』と言われた」
月極駐車場やアパート敷地を管理されているオーナー様から、こうしたご相談をよくいただきます。邪魔だからレッカーで移動させたい——その気持ちは当然です。しかし、たとえ自分の土地であっても、放置車両を勝手に撤去すると逆にこちらが法的責任を問われるリスクがあります。
この記事では、なぜ勝手に撤去してはいけないのかという法的根拠から、所有者の特定方法、内容証明郵便による催告、撤去にかかる費用の目安まで、正しい手順を一本で解説します。所有者が不明な場合の対処法や、放置車両を未然に防ぐ予防策もあわせてご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. 放置車両を勝手に撤去するとどうなる?「自力救済禁止」の法的リスク
1-1 「自力救済」は法律上認められていない
結論から言えば、私有地に放置された車であっても、オーナーが勝手に撤去・処分してはいけません。
その根拠となるのが「自力救済禁止」の原則です。最高裁昭和40年12月7日の判決では、「私力の行使は原則として法の禁止するところであり、緊急やむを得ない特別の事情がある場合に限って例外的に許される」と示されています。つまり、自分の権利を守るためであっても、法的手続きを経ずに自力で解決することは原則として認められていないのです。
「自分の土地なのだから何をしてもいいはず」と思われるかもしれませんが、放置車両はあくまで他人の財産です。無断で移動や処分を行った場合、民法第709条(不法行為)に基づき、逆にオーナー側が損害賠償を請求されるリスクがあります。
1-2 違反した場合に問われるリスク
放置車両を勝手に動かした場合、具体的にどのような法的リスクがあるのかを整理します。
まず、器物損壊罪(刑法第261条)です。車両を移動する際に傷をつけたり、タイヤロックをかけて使用不能にしたりすると、3年以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になり得ます。
次に、窃盗罪(刑法第235条)です。車両を無断で処分・売却した場合は、窃盗として刑事責任を問われる可能性があります。
そして見落とされがちなのが、損害賠償のリスクです。撤去の実務に詳しい専門家によると、不適切な撤去を行った場合、車両の時価相当額(場合によっては数百万円)の賠償を求められるケースもあるとされています。
車体に直接張り紙を貼る行為も、塗装の補修費用を請求される原因になりかねません。被害者であるはずのオーナーが加害者にならないよう、くれぐれも感情的な行動は避けてください。
2. 放置車両の所有者を特定する方法
2-1 まずは警察に通報・相談する
放置車両を発見したら、最初にすべきことは警察への通報・相談です。
私有地の放置車両は原則として民事上のトラブルとして扱われるため、警察が直接撤去してくれるわけではありません。しかし、通報しておくことには2つの意味があります。ひとつは、その車が盗難車や車検切れの車両であった場合に刑事事件として対応してもらえる可能性があること。もうひとつは、後に法的手続きへ進む際に「正当な手順を踏んだ」という記録を残せることです。
通報の際は、車両のナンバー・車種・色・放置場所の4点を正確に伝えましょう。あわせて、放置車両の写真を日時がわかる形で撮影し、記録として残しておくことも重要です。「いつから放置されているか」を客観的に示す証拠は、後の手続きのあらゆる場面で役立ちます。
2-2 運輸支局で「登録事項等証明書」を取得する
警察への相談と並行して、所有者の特定に動きます。
普通自動車の場合、管轄の運輸支局(国土交通省)でナンバープレートの情報をもとに「登録事項等証明書」を取得できます。行政書士の解説によると、手数料は1件あたり400円で、「私有地への放置車両の所有者確認」は正当な請求理由として認められています。申請には運転免許証などの本人確認書類が必要です。
軽自動車の場合は運輸支局ではなく、軽自動車検査協会での手続きとなります。
3. 所有者への催告から撤去までの正しい手順
3-1 ステップ① 内容証明郵便で撤去を催告する
所有者が判明したら、まずは内容証明郵便を送付して車両の撤去を催告します。内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明してくれる制度です。
催告書には、車両情報(ナンバー・車種・色)、放置されている場所の所在地、撤去の期限、そして「期限内に応じない場合は法的措置を講じる」旨を記載します。行政書士の解説によると、撤去期限は到達後14日〜30日程度の設定が一般的です。費用は1枚あたり440円に、配達証明付き書留の料金が加わります。
口頭での「動かしてほしい」という要望だけでは、後に「聞いていない」と言われてしまうリスクがあります。内容証明郵便を送ることで、催告の事実を客観的に証明でき、次の法的手続きに進むための重要な証拠にもなります。
3-2 ステップ② 応じない場合は訴訟と強制執行
内容証明郵便で設定した期限を過ぎても車両が撤去されない場合は、裁判所への訴訟提起を検討する段階に移ります。
訴額が140万円以下であれば簡易裁判所、それを超える場合は地方裁判所が管轄となります。判決を得た後も相手が自主的に車を引き取らない場合は、強制執行によって撤去を実現することになります。
ただし、後述する費用のとおり、法的手続きには相当のコストと時間がかかります。訴訟を提起してから判決が確定し、強制執行で車両が実際に撤去されるまでには、半年程度を見込んでおく必要があります。「費用をかけてでも法的に白黒つけたい」のか、「費用を抑えて早く解決したい」のかによって、最適な手段が変わります。個人での判断が難しい場合は、弁護士への相談を検討してください。
4. 所有者が不明・連絡がつかない場合の対処法
4-1 公示送達の活用
所有者の住所が判明しない場合や、転居先が不明で内容証明郵便が届かない場合は、「公示送達」という制度を活用できます。これは、裁判所の掲示板に2週間掲示することで、相手に書類が届いたものとみなす制度です。公示送達が認められれば、相手が不在であっても訴訟を進めることが可能になります。
4-2 撤去専門業者への依頼
所有者が不明、あるいは法的手続きを個人で進めるのが難しいと感じた場合は、放置車両の撤去を専門に扱う業者への依頼も有力な選択肢です。
撤去専門業者に依頼するメリットは、所有者の調査、通知の発送、撤去作業、一時保管、解体手続きまでを一括で任せられる点です。撤去の実務に詳しい専門家によると、法的手続きでは半年〜1年かかるケースが多いのに対し、専門業者ルートでは最短数週間で対応できるとされています。一般的には、通知から撤去完了まで1〜3ヶ月程度が目安です。
また、車両にリサイクル価値(金属資源としての価値)が残っている場合は、その価値を撤去費用と相殺することで、実質的な費用負担が大幅に軽減されるケースもあります。まずは複数の業者に見積もりを依頼し、対応範囲と費用を比較検討することをおすすめします。
5. 撤去にかかる費用の目安——ルート別に比較
放置車両の撤去にかかる費用は、どのルートで進めるかによって大きく異なります。撤去の実務に詳しい専門家の公開情報をもとに、ルート別の費用と所要期間を比較します。
※法的手続きの内訳は、訴訟費用約10万円+弁護士費用約50万円+強制執行費10〜20万円が目安です。簡易対応プランは所有者の承諾がある、またはトラブルリスクが低いケースが対象です。
法律上は、民法第709条(不法行為)に基づき、放置車両の所有者に対して撤去費用や土地使用料相当額(近隣駐車場の賃料を基準に算出)を損害賠償として請求することが可能です。
ただし実務上は、所有者と連絡が取れない・支払い能力がないケースも多く、費用の全額回収は難しい場合が少なくありません。とくに法的手続きを選んだ場合、弁護士費用だけで数十万円かかる一方、放置車両の賠償額自体は駐車料金数ヶ月分にとどまることが多いため、費用倒れになるリスクもあります。
なお、駐車場賃料の債権については権利行使可能時から5年で消滅時効を迎えます。放置に気づいた時点で早期に対応を始めることが、損失を最小限に抑える鍵になります。
6. 所有者が不明・連絡がつかない場合の対処法
放置車両のトラブルは、事後対応に大きなコストと手間がかかることがここまでの解説でお分かりいただけたかと思います。もっとも効果的な対策は、そもそも放置が起きにくい仕組みを作っておくことです。
6-1 契約書に撤去条項を盛り込む
「契約終了後○日以内に車両を引き取らない場合、賃借人の費用負担にて撤去できるものとする」といった条項をあらかじめ契約書に明記しておくことで、万が一の際の対応がスムーズになります。これから契約書を整備する方はもちろん、すでに運営中の駐車場でも契約更新のタイミングで見直すことが可能です。
6-2 定期的な巡回で早期発見
放置車両は発見が遅れるほど問題が複雑化します。とくに契約終了後の区画や長期間動きのない車両については、月1回程度は目視で確認する体制を作っておきましょう。
とはいえ、巡回・契約管理・滞納督促・放置車両への対応…これらすべてを個人で行い続けるのは、精神的にも時間的にも大きな負担です。
「放置車両の対応だけで本業に支障が出ている」「法的手続きを自分で進めるのは難しい」と感じている方は、駐車場管理の専門会社への委託も有力な選択肢です。管理委託を活用すれば、放置車両への初動対応から日常的な巡回管理、トラブル発生時の窓口対応まで一括で任せることができます。
7. 放置車両は「勝手に撤去」ではなく「正しい手順」で解決する
今日の記事のポイントをあらためて整理しますと、
① 自分の土地でも放置車両を勝手に撤去すると器物損壊罪や損害賠償のリスクがある
② まずは警察への通報と運輸支局でのナンバー照会(400円/件)で所有者を特定する
③ 所有者が判明したら内容証明郵便で撤去を催告し、応じなければ訴訟・強制執行へ
④ 所有者不明の場合は公示送達や撤去専門業者への依頼を検討する
⑤ 法的手続きは半年・50〜70万円、専門業者は1〜3ヶ月・10〜16万円が目安
⑥ 再発防止には契約書への撤去条項の明記と定期巡回が有効
放置車両は、対応を誤ると被害者であるオーナー自身が法的リスクを負ってしまう厄介なトラブルです。焦って自力で解決しようとするのではなく、一つひとつのステップを正しく踏むことが、結果的にもっとも早く・安全に問題を解決する道筋になります。
「放置車両の対応に手が回らない」「法的な手続きを自分ひとりで進めるのは不安」とお悩みの方は、まずは駐車場管理の専門家にご相談ください。放置車両への初動対応から再発防止策まで、状況に合わせた具体的な対策をご提案いたします。
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監修者情報

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